1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:08:28.95 ID:BxLc1/Ni0
「携帯が・・・喋った・・・」
『あっ!!やっちゃった・・・』
僕は自分の携帯に目をやる。昨日変えたばかりの新機種だ。
ネットのとある掲示板に夢中になってて気付かなかったが、
携帯が青いランプを点滅させメールの受信を知らせていた。
「あっ本当にメールがきてる」
『亮介さん、からのメールですね』
「どれどれ・・・本当だ」
『早く送り返してあげて下さいね。至急返信とタイトルに書いてあるので』
「そうだね。ところでさぁ・・・」
『はい?』
「何で携帯が喋ってるの?」 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:09:17.96 ID:cfscqaFG0
これは・・・保守 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:10:25.53 ID:BVi/EHw10
最近支援と保守勘違いしてるバカが多すぎる 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:11:19.80 ID:/zLMIP620
新参が多いんだろ 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:13:07.69 ID:VeKdGT8wO
>>これは・・・保守
wwwwwwwwwwこれはないwwwwwwwww 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:12:35.35 ID:BxLc1/Ni0
『やっぱり疑問に思ってましたか?』
「それはさすがに思うよ。これでもびっくりしてるんだ」
『そうなんですか・・・あまりにも落ち着いてらしたので』
「えっと、君?も開き直ったように喋るね。最初やっちゃったって言ってなかった?」
至急返信と書かれた亮介からのメールは置いておく。
内容は今日のテレビがどーとかという返信の必要すらなさそうなものだからだ。
どうしてあいつはいつもこんなメールしか送らないのか、と小一時間(ry
とにもかくにも、今はこの不思議な携帯が気になる。
「君は一体、何なの?」 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:14:33.77 ID:cfscqaFG0
保守 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:15:13.56 ID:mxqAa5O0O
あえて保守 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:15:17.49 ID:BxLc1/Ni0
『私ですか?どう答えたらいいのか・・・』
『簡単に言いますと、この携帯番号に振り分けられた守護霊、でしょうか?』
「いや、聞かれても困るけど」
『私も元は人間なんですが、3年前に病気で死んでしまって・・・』
『それから3年間で人間だった記憶をほとんど消されて、守護霊として生きることを命じられました』
「命じられた、って誰に?」
『それはよく知りませんね。とにかく守護霊となって何か目的を果たせば無事天国に逝けるというシステムになってます』
システム?死んだ後も何かしらのルールがあってその中で生活をするのだろうか。 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:18:52.55 ID:BxLc1/Ni0
「ごめん、何だかだんだんと頭が疲れてきた・・・」
「とにかく天国に逝くために何かしなきゃいけないってこと?」
『そうですね。死んですぐに天国に逝けると思ったら大間違いですよ』
きっぱりと言われた。
「それで、その果たすべき目的って何?」
『捕われた鎖を断ち切る、と教えられましたが何のことだか私には・・・』
「そっか・・・。記憶がほとんどなくなってるって言ってたね・・・」
はい、と悲しそうな声が携帯から発せられる。
若い女の子の声と思われるそれは、僕の心を動かすには十分だった。 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:22:21.35 ID:BxLc1/Ni0
「・・・僕の携帯の守護霊になったのも何かの縁だし、その目的探し手伝うよ」
『・・・え?でも、私何もわかっていませんよ?』
「まぁ何か出来るのかわからないけどさ、この携帯の中にずっと居るわけだよね?」
「だったら僕と協力したほうが絶対に早く見つかると思うから」
『・・・優しいんですね』
くすっと笑う声がした。優しい笑い声だ。
『・・・それじゃあ、お願いしてもいいですか?』
「おう!何か思い出したらすぐに言ってよ!」
『はい!ありがとうございます!』 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:24:03.52 ID:+zXca6WG0
これは・・・あえて保守 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:24:46.88 ID:cfscqaFG0
ここは保守 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:26:08.58 ID:BxLc1/Ni0
『それじゃ、最初のお願いなんですけど』
『よかったらマナーモードを解除してもらえますか?』
「あぁ、うんそれくらい」
携帯を開き、マナーモードを解除する。
一体何をさせたいのかはわからないが。
『解除されましたね。ありがとうございます』
その言葉とともに携帯が若い女の子に姿を変えた。
さすがにこれには驚いて言葉が詰まる。
目を見開き、口をぽっかりと開ける僕に女の子が語りかけた。 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:26:46.90 ID:uUN507p/O
むしろ保守 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:28:17.25 ID:NmVf9YziO
これは・・・保守 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:29:26.45 ID:BxLc1/Ni0
面白い流れになってるwwww
「ふうっマナーモード中は姿が見せれないんですよね」
「えっ・・・あ・・・」
上手く言葉が出てこない。
年は僕より少し若いくらいだろうか。少し茶色がかったセミロングの髪の毛がふわっと揺れている。
首に長めのピンク色のストラップで携帯をかけている。僕が昨日買い換えた新機種だ。
「私たち守護霊の間ではこうやって姿を現すことを限定解除といいます」
「やかましいわ」
やっと言葉が出た。 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:29:33.93 ID:UEigdVecO
チッ・・・保守すればいいんだろ・・・ 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:32:16.80 ID:BxLc1/Ni0
文字通り朝まで携帯の女の子、通称けーこと語り明かした。
けーこという名前は僕が勝手に決めたら、彼女がすごく喜んだので決まった。
他にもさまざまな名前(全部アニメから拝借)を提案したが、この名前が一番のお気に入りらしい。
けーこと話して分かったことをまとめると、
・死後、地獄に行く人間にはこの機会は与えられない。
・何もしなくても天国に逝ける人間もいる。
・全ての携帯番号に守護霊がいるわけではない。
・本来、普通の人間に存在を知られたらアウト。何かしらの罰がある可能性も。
・18歳で亡くなった。3年前に18歳だから、僕と同い年になる。名前とかは覚えていない。
・僕の携帯を選んだのはけーこ自身。ただなぜそれを選んだのかは覚えていない。
などなど、だ。 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:32:39.08 ID:4O3peIRI0
ならば保守 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:37:42.33 ID:BxLc1/Ni0
もっと色んな話をしたが、知れば知るほどいわゆるあの世、のシステムは複雑にできている。
全てを理解するのは無理だと判断した。
それに死ねばいずれわかるだろうし。
「携帯を持ち運ぶ時は、僕はどうすればいいの?」
「私が隣を歩いてもいいですし、マナーモードにすれば楽ですよ」
「けーこは、他の人にも見えるの?」
「見えますね。守護霊は普通の霊とは違いますから」
そのための3年間の修行です!と胸を張って言った。 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:44:12.50 ID:BxLc1/Ni0
「あんまり周りの人に見せるのもあれだし、人前ではマナーモードにしておくよ」
「そうですね。それがいいと思います」
「僕は普通の携帯と同じように扱えばいいのかな」
「はい。あっでもご希望でしたら、メールの読み上げや着うたを私が歌うとかも出来ますよ」
「・・・いや、遠慮しておこうかな・・・」
「・・・せっかく3年間歌の練習したんだけど・・・」
がっかりしてるようだが、見てるこっちが恥ずかしくなりそうだからやっぱり却下した。 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:51:35.50 ID:BxLc1/Ni0
翌朝、ほとんど眠ることが出来ずに気だるい体を起こして大学に向かう。
寝るときはけーこをマナーモードにすることで話は落ち着いた。
さすがに可愛らしい女の子が同じ部屋に寝ると考えると、僕が落ち着かない。
大学に入って、一人暮らしをやっててよかったなと思う。
親がいたらそれこそけーこと会話すら出来ないだろう。
家を出てすぐに携帯が震えた。
『まだ眠いです・・・』
送り主は書いてない。アドレスすらも。
おそらくけーこだとはわかったが。
メールで会話も出来るのか。人前ではこうやって会話するかな。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:56:50.33 ID:BxLc1/Ni0
「おっす」
「おぉ、亮介おはよう」
亮介は大学で知り合ったキャンパスメイト。
知り合って2年と少ししか経っていないが、僕の一番の親友だ。
友達が少ないわけではないんだけれど。
「今日は俺早退するから、代返よろしくな」
「いいけど、何で?」
「今日は墓参りに行かなきゃいけないんだ」
「あぁ・・・幼馴染の女の子か・・・」
「おう。だから昼の授業は頼んだぜ」 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:57:22.80 ID:VaMFSiph0
ktkr 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 21:57:38.14 ID:lXLMb7qlO
見てるの俺だけか?
まぁいい支援 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:00:08.57 ID:82NjlFu7O
支援…
…あ、やっぱ保守で^^ 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:01:36.47 ID:BxLc1/Ni0
爽やかに笑う亮介。
亮介は背が高く、顔もいいから少なからず女の子からモテる。
しかしこいつは誰とも付き合おうとはしていない。
ずっと好きで、思いを伝えられなかった幼馴染のことが忘れられないらしい。
引く手数多な亮介が誰にもなびかない姿は、見ていて男らしいと、かっこいいと男の僕でも思う。
昼休みが終わり、亮介がよろしくと大学を出た後に携帯が鳴った。
『おはようございます!今起きました~』
どんだけ寝てるんだ。 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:03:20.25 ID:+zXca6WG0
俺も見てるよ。保守
そしてその女の子がどんなビジュアルなのかも興味がある。 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:05:00.80 ID:BxLc1/Ni0
大学から家に帰り、携帯のマナーモードを切る。
けーこが姿を現した。
「ふうっ、お疲れ様です。おかえりなさい」
「ただいま。早速だけど、けーこに聞きたい事がある」
「何ですか?」
「けーこは自分がどこで暮らしていたか覚えてる?」
「覚えていますよ。この街です」
「えっ!?そうなの!!?」
「そうですよ~。言ってませんでした?」 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:09:14.85 ID:BxLc1/Ni0
「聞いていないよ」
「そうでしたっけ?」
「私たちは目的を知らされていないから、代わりというか何というか自分の故郷に配置されるんです」
「その地域の中からあなたを選んだんですよ」
「そうだったんだ・・・じゃあこの街を歩き回ればけーこの目的が何かわかるかも・・・」
「そうですね、さっきも歩いてて見たような気がする街並みでしたから・・・」
懐かしそうに遠い目をするけーこ。
けーこはどこまで記憶が残っているんだろう。
「だったら言ってくれればよかったのに」
「何となく、迷惑かな、と思いまして」
えへへ、と笑う。
迷惑だと思うなら首を突っ込まないのに。
むしろ僕がやろうとしていることが迷惑になる気がするのに。 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:11:23.60 ID:cfscqaFG0
保守 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:14:27.70 ID:nnF1j6so0
保援 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:14:27.79 ID:BxLc1/Ni0
「・・・でも、大丈夫なの?」
「?何がですか?」
「天国に逝くために目的を果たすんだろ?」
「それなのに、記憶が少しでも戻ったら未練が出るんじゃないかな」
「僕がやろうとしていることは、けーこの記憶を戻そうとしている」
「けーこにとって迷惑じゃないか?」
けーこが優しい顔で笑った。
僕より3つも年下(のはず)なのに、こんなに優しい顔が出来るのはどうしてだろう。
「迷惑だなんて、そんなこと思わないで下さい」 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:18:53.83 ID:BxLc1/Ni0
「私がドジ踏まなければあなたを巻き込むこともなかったのに」
「それどころか、あなたじゃなければ私は今頃捨てられていたかもしれません」
「だから、ありがとうと言わせてください」
「そしてもう一つ・・・」
けーこの表情が少しだけ暗くなる。
でもまたすぐに優しい表情に戻った。
「もし、嫌になったら・・・その時は私を捨ててください」
「電話番号を解約すれば、私もあなたの前から消えますから」
そんな、優しい顔で言わないでよ。
昨日初めて言葉を交わしたばかりなのに。
そんな辛いことを、そんな優しい顔で言わないでほしい。
胸がずきん、と痛んだ。
絶対にけーこのために目的を果たそう。
そう誓った。 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:25:07.60 ID:BxLc1/Ni0
同日、深夜―――
けーこはメールの受信に目を覚ました。
送り主は・・・『守護霊執行部』
『何だろう、これ・・・』
『守護霊5963号を霊法072条、人間との直接的接触禁止項目の違反とし刑を執行する』
『期日は4日後』
『やっぱり、姿を見せたのまずかったのかな・・・』
『でも、仕方ないよね・・・』 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:27:58.35 ID:BxLc1/Ni0
すまんちょっとでかける 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:28:11.21 ID:+zXca6WG0
>>45
そこでかよ!! 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:29:28.44 ID:lXLMb7qlO
>>45
保守しろってことか、なるほど 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:29:39.36 ID:S3yF6EOrO
じゃあ支援 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 22:55:57.61 ID:XFiZ2CteO
これは…支援で 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 23:19:45.40 ID:+zXca6WG0
支援 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 23:52:00.69 ID:lXLMb7qlO
まだか支援 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 23:59:30.06 ID:BxLc1/Ni0
1です
本当にいきなりほっぽらかしてごめん
あと30分ほどで戻ります 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/18(月) 23:59:55.71 ID:XPU2pMDlO
ほ…じゃなくて支援 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:21:21.83 ID:8s41lqTY0
翌朝、目が覚め大学に向かう。
亮介は大学に来ていなかった。
生まれてずっとこの街に住んでいる亮介に何か話を聞こうと思っていたけど。
まぁ明日でもいいか。
けーこは相変わらず昼過ぎに
『まだ眠いです・・・おはようございます・・・』
とメールをしてきた。
この子は生きてた時はどんな生活をしていたのか。
『おはよう、眠り姫様』
メールを返信してみた。
『うわっ!!びっくりした・・・
私に返信がくるなんてことはないからw(←絵文字』
喜んでるみたいだ。 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:26:28.90 ID:8s41lqTY0
『メールどうやって打ってるの?』
『考えたことをえいやってすれば送れますよ』
『・・・どうゆうこと?』
『メールを打ちたいってえいやって念じることですよ』
『ちなみに僕の携帯の中身は全部わかるんだよね?』
『はい、わかります
でもメールとかはプライバシーだから中は見ないようにしてますよw』
『それは助かるかも』
あまり他人にメールの内容を見られるのはいい気がしないし、
それにけーこに見られるとどこか恥ずかしいような気持ちになる。 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:30:31.72 ID:8s41lqTY0
『ところで、どこか行きたい場所はある?』
『私、水族館に行きたいですね』
『そういう事じゃなく。僕が決めてもいい?』
『残念・・・。お任せします・・・』
『そんなに凹まないでよ。いつか、ね』
『いつか・・・。・・・はい!お願いしますねw』
今日の僕たちの行く場所は決まった。高校巡りだ。 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:36:28.87 ID:8s41lqTY0
けーこが18歳で亡くなったのなら、その時高校生だったはずだ。
昨日見慣れた街並みだと言ってたくらいだから、通ってた高校に行けば何かわかるかもしれない。
この街には高校が4つあるから、それを全て今日で見てしまおう、ということだ。
『ここ、見たことがあります・・・』
3つ目の高校の校門に着いた時、けーこからメールがきた。
この高校は県内でも有数の進学校だ。
僕の通う大学はそこそこレベルが高いので、この高校から
ずいぶん多くの学生がきていると聞いた事がある。
僕は県外からだからあまり詳しくはないが。
誰に聞いたんだっけ?この話・・・。
思い出した。亮介だ。 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:41:49.78 ID:8s41lqTY0
『中に、入ってみる?』
『・・・はい』
明らかに怯えている。
記憶を失くすこと、取り戻すことは一種の精神破壊だと聞いた事がある。
本当に僕は進んでもいいのか?
『お願いします』
けーこが声を出した。
街中で声を出すのは初めてのことだ。
それだけ強い、けーこの意思を感じた。
「わかった・・・行くよ」
『はい、お願いします・・・!』
「君は何をやってるんだね?」
ガチムチの体育教師に止められた。 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:47:40.63 ID:c3cHgMJjO
けーこ
CV:能登麻美子 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:47:48.79 ID:8s41lqTY0
「あ~!!もう何だよ、あの教師!!」
悪態をつきながら歩く。
バイブで携帯が震えた。けーこだ。
『でも、あの先生、あぁ見えて茶道部の顧問なんですよ?』
『うそっ!?あれで!!?』
『はいwチワワを飼ってるって言ってましたよw』
『あの体でチワワw合わなさすぎだよ』
『ってか、どうして知ってるの?』
『え?・・・あ』
『メールで見ると面白い文章だな
何か思い出したの?』
『え・・・いえ・・・全部は思い出してはいないんですが・・・』
『でも私は、あの高校に通っていた・・・』 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:53:50.67 ID:8s41lqTY0
確信に変わったらしい。
それから家に帰るまで、けーこも僕も一言も言葉を交わさなかった。
僕は家に帰ってこれからの予定を考えた。
とりあえず亮介に話を聞くことだ。
あの高校の話をしたのは亮介だから、何か知っているかもしれない。
ただ、今携帯で連絡をとるとけーこに見られる可能性もある。
何か重大な話だとしたら、今のけーこに見せるのは酷だ。
明日大学で。けーこの目が届かない場所で。
そう決めた。
『マナーモード解除してもらってもいいですか?』
「あ、あぁうん。はい」
「さっきは呆然となってごめんなさい」
「いや、当然だよ。仕方ない」
「お詫びに、というわけでもないですが夜ご飯私が作りますよ!」 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 00:59:55.29 ID:8s41lqTY0
「え!?・・・いや、悪いからいいよ」
「遠慮しないで下さい」
「それにここ2日、ずっとコンビニ弁当じゃないですか」
「栄養が偏りますよ!」
確かに僕は料理が苦手だ。
料理自体はまずくはないのだが、料理する作業がめんどくさい。
いけないとは思うけど、文明の発達した現代、コンビにはこんな時のためにあるんだ。
でもせっかく作ってくれるのなら・・・
「じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「はい!というわけでお買い物に行きましょう!!」
何だか同棲してるみたいだな、と照れくさくなった。
正直に言うと、けーこの手料理を食べれるのが嬉しくて仕方なかった。
胸が高鳴るのを感じる。
買い物に行くときにけーこをマナーモードにしなきゃいけないのが嫌だと思った。 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:01:09.09 ID:8s41lqTY0
ちょっと10分くらい離れます
つか見てくれてる人っているのか?
俺一人だったら・・・ゴクリ 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:04:33.03 ID:xxgOLC+40
いるおー 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:05:04.65 ID:AiSivWf4O
いるぜ 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:11:36.25 ID:gJC43evbO
います 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:16:48.81 ID:8s41lqTY0
み、みんなありがとう・・・
すっきりしたし再開します 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:20:26.92 ID:8s41lqTY0
けーこが作ってくれたのはハンバーグだった。
「作り方覚えてたの?」
「そういえば不思議ですね」
「ハンバーグは何度も作ったことがある気がします」
「へぇ。・・・それじゃ、いただきます!」
「はい、どうぞ」
手作りのハンバーグなんて実家に帰った時以来だ。
ケチャップがハンバーグにかかっていて、俺と同じ嗜好だと嬉しくなった。
味は申し分なく、すごいスピードで平らげた。
それを見ながら微笑ましそうにけーこは俺を見ていた。
けーこは、何か口にすることはできないのに。 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:25:43.31 ID:8s41lqTY0
同日、深夜―――
けーこのもとにまたもやメールが受信される。
『もう、わかってるから・・・』
『守護霊5963号を霊法072条、人間との直接的接触禁止項目の違反とし刑を執行する』
『期日は3日後』
『わかってる・・・。わかってるから・・・』
『もう少しだけ、このままで・・・』 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:30:39.58 ID:8s41lqTY0
朝目が覚めて、大学に行く。
この生活はけーこが現れても変わらない。
もっとも朝けーこが起きることはないが。
「おっす、亮介。早いな」
「うす、昨日サボった分早く来ないといけないだろ」
「そういや、昨日何してたんだよ」
「お前に用事があったのに」
「ん、あぁ。昨日が幼馴染の3回忌だったからな」
「・・・あぁ、そうか」
「もう3年も経つのにな、忘れらんね」
「そんだけ・・・好きだったんだろ」
「あぁ、まぁな」 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:32:42.97 ID:mreBX6asO
アニメ化マダー? 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:36:02.92 ID:8s41lqTY0
サラッと恥ずかしげもなく言ってのける。
その言葉でどれだけ幼馴染のことが好きだったかがわかった。
多分、僕にはこんなにハッキリと気持ちを伝えるのは無理だろう。
「そんで、用事って何?」
「あぁ・・・ちょっといいか?」
講義が始まるまで時間が少しある。
バックの中にけーこを入れて、外まで亮介を連れ出した。
「亮介さ、そこにある進学校について僕に前に話したよな?」
「あぁ、俺の母校だろ。話した話した」
「えっ!?お前あそこ出身だったっけ?」
「うわひっでー。親友の高校も知らないとか」
「親友だったっけ」
「グーで殴ってやるよ」 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:39:59.56 ID:8s41lqTY0
「ごめんごめん。ところでさ・・・」
言おうかとした瞬間、ハッと気付いた。
まさか・・・。
3年前に亡くなった亮介の幼馴染。
3年前に病気で亡くなったけーこ。
「何だよ、言えって」
「・・・亮介さ、ハンバーグ好きだったよな?」
「ん、大好物だけど、もしかして用事ってそれかよ・・・」
「まさかお前が俺に作ってくれるとか!?」
「いくら俺が好きでもさすがにそれは無理だぞ」 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:44:16.88 ID:8s41lqTY0
「・・・亮介の幼馴染って、亮介と高校も一緒・・・か?」
「・・・そうだよ。ハンバーグもあいつが得意だったから好きなんだ」
もう、多分決まりだ・・・。
「・・・写真とか、今持ってる?」
「あぁ、そういえば昨日おばさんに貰ったな・・・」
ほれ、と写真を俺に手渡す。
あぁ、やっぱり。
今と変わらない優しい笑顔。
肩まで伸びた茶色がかった髪。
大きく黒々とした瞳。
細くて白い腕。
どこを見てもそうだ。
けーこだ。 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:49:25.62 ID:8s41lqTY0
頭が真っ白になった。
亮介がけーこの本当の名前を言っていた。
「蛍って書いてけいって名前なんだ」
あぁ、だからけーこはけーこって名前を気に入ったんだ・・・。
僕の憶測だけど。
好きな人に呼ばれる名前に似てたから・・・。
亮介が呼ぶ名前に似てたから。
僕たちは話を切り上げて教室に戻った。
そしてそのまま僕は・・・
教室を逃げるように後にした。 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:55:01.80 ID:8s41lqTY0
自分が卑怯だと分かっていた。
でも足が止まらない。
きっと亮介は不思議そうな顔で僕を見ていただろう。
でも足が止まらない。
けーこが起きる前に、この場を離れないと。
けーこが亮介と会ったら多分、全部思い出す。
『捕われた鎖を断ち切る』
多分、けーこは亮介と会うことが、会って話すことがけーこの為すべきことなんだ。
けーこは亮介と会わなきゃいけないんだ。
頭ではわかっている。でも体が言う事をきかない。
それも全部わかっている。
僕はけーこが好きなんだってこと。 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:56:10.43 ID:7pPdgGnRO
クライマックスか、しえ……保守 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 01:59:36.59 ID:8s41lqTY0
けーこが目を覚ました時、僕はあてもなく街を歩いていた。
蛍さんと亮介が育った街を。
『今日は大学はいいんですか?』
『休講になったから』
けーこの問いに嘘で返す。
ごめん、ごめん、ごめんなさい、ごめん、ゴメン。 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:04:35.41 ID:8s41lqTY0
繁華街に出てあてもなく歩く。
『わぁ!可愛い洋服がいっぱいですよ!!』
『ちょっと寄りませんか?』
『あっ!大道芸みたいなのやってますね!』
『すごいなぁ。見ていきましょうよ!!』
けーこがはしゃいでいる。
けーこが喜んでいられるように、僕はけーこの要望を全て受け入れた。
けーこは顔こそ見えなかったが、喜んでいるのがわかった。
それがさらに胸を締め付けた。 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:11:10.18 ID:8s41lqTY0
家についてそのままベッドに倒れこんだ。
『ちゃんとお風呂入らなきゃダメですよ!』
「今日は、体調が悪いから寝るよ・・・」
『えっ!?もしかして私が色々わがまま言ったせいじゃ・・・』
「いや、違うよ。大丈夫、心配要らないから」
『でも・・・』
けーこが何か言っていたが、僕はそのまま眠りに落ちた・・・。 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:17:20.98 ID:8s41lqTY0
同日、深夜―――
もう、メールが来ることをわかっていたけーこは眠らずに待っていた。
『来たみたい・・・』
『守護霊5963号を霊法072条、人間との直接的接触禁止項目の違反とし刑を執行する』
『期日は2日後』
『?まだ、続きがある・・・?』
『尚、これ以上の深い接触が認められた場合、対象となる人間にも相応の措置を執る』
『うそ・・・?』
『うそ!!?ねぇ・・・!!やめてよ・・・』
『ねぇ・・・お願いだから・・・』
『私が消えれば、全て済むのに・・・』 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:19:59.47 ID:8s41lqTY0
翌日、僕は昼過ぎに目が覚めた。
メールが数件来ている。
亮介『今日はお前がサボりかよw昨日から体調でも悪いんかー?』
けーこ『おはようございます!って、まだ寝てるんですかー?』
けーこ『起きて下さい、遅刻ですよ?』
けーこ『大丈夫ですか?返事してくださいよ・・・』
メールの確認が終わった頃、けーこから受信があった。
『やっと起きましたねw心配しましたよ?』 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:26:49.70 ID:8s41lqTY0
マナーモードを解除し、けーこが姿を現す。
「もう、いつまで寝てるんですか?」
「って、私が言っても説得力ありませんね」
「今日は学校はお休みですか?」
「ねぇ・・・けーこ」
「はい?」
「・・・水族館に、行こうか?」
「・・・はいっ!」 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:31:23.96 ID:8s41lqTY0
すぐに身支度を整え、出発の準備をする。
けーこは、マナーモードを解除した状態で連れて行くことにした。
「いいんですか・・・?」
「もちろん」
「けーこも自分の足で動き回って色々見たいでしょ?」
「・・・はいっ!ありがとうございますっ!!」
けーこの為だと口では言ったが、自分の為だった。
相変わらず自分が卑怯で嫌になる。
僕らの最初で最後のデートだ。 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:35:19.68 ID:8s41lqTY0
「早く行きましょう!早く!!」
バスから降りた途端、けーこは駆け出した。
よっぽど動き回れるのが嬉しいのか、見ているこっちが嬉しくなるはしゃぎようだ。
「あんまり走ったら転ぶよ」
「大丈夫です!私、守護霊だから痛くありません!!」
「・・・あんまり大声でそんなことを言わないで・・・」
周りの人が痛いカップルを見る目で僕らを見ている。
いや、本当なんだから仕方ないだろ。 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:40:20.97 ID:1O7Wwgo0O
これは…保守 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:41:01.18 ID:8s41lqTY0
「わぁ!!たくさんキレイなお魚がいますねぇ!!」
「どうして水族館に行きたかったの?」
「えっと・・・どうしてでしょうか?」
「いや、わからないけど」
「何か約束してた気がするんですよね・・・」
「・・・そう、なんだ」
胸がまた痛む。
耐えろ。もう決めたはずなのに。
「まぁ、そんなことどうでもいいですよね!」
「・・・え?」
「今、あなたとここに来れたことが私は嬉しいです」
「・・・そっ、か」
その屈託のない笑顔にまた胸が痛んだ。 110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:45:21.66 ID:xk7/76+2O
これは…保守 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:46:53.96 ID:8s41lqTY0
「イルカショーまで時間ないですね、急いで!!」
「大丈夫だって、まだ間に合うよ」
「・・・こんなこと、慣れてるんですか?」
「え?どういうこと?」
「いえ・・・女の子とこんな感じで遊びに行くことが、です」
「携帯のメモリーには女の子の数が少なかったから」
「あまり何も思わなかったんですけど・・・」
「いや!思ってた通りで全然慣れてないよ・・・」
「てか、人のメモリーを勝手に見るなっ!!」
「えへへ、そっか!だって見えちゃうんですもん」
「僕のプライバシーって無いに等しいよね?」
「そんなことありませんよ?私、口が堅いですから」
「そんな意味じゃないんだけどね・・・」
二人して笑った。
この笑顔をずっと隣で見ていたいと、望んでしまう。
願うことくらいなら、いいのかな。 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:52:08.50 ID:8s41lqTY0
「あーっ、楽しかった!!」
「今日は連れて来てくれて、本当にありがとうございました」
けーこが深々と頭を下げる。
もう日が落ちかけている。
僕ら二人の影は長く前に伸びていた。
楽しかったな。
また、来たいな。
別の場所にも行きたいな。
また、二人で。
この夕影のように、並んで。
そんな気持ちを押し殺して僕はけーこに話しかける。
「あのさ、けー・・・」
「話が、あります」
けーこの凛とした声に思わず口をつぐむ。
「ここで・・・、・・・お別れです」 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 02:56:50.61 ID:8s41lqTY0
「・・・どうして・・・?」
「あなたに私の存在が知られたこと、あなたと接触したこと」
「・・・そして、あなたと親密になったこと・・・」
「全て霊法に触れる行為だったんです・・・」
「霊、法?」
「はい。霊たちを管理する法律です」
「前に話しましたよね?あの世のシステムは複雑に出来てるって・・・」
「あはは、私も詳しくは知らないんですけど、その中のルールはこっちの世界よりも厳しくて」
「当然ですよね、私たち霊は普通の人間とは違うから」
「だから・・・そのルールが厳しくなるのも当然ですよね」
笑っているけど、声がいつもの優しい声じゃない。
震えている・・・。 115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:00:57.20 ID:8s41lqTY0
「ただ、あなたと一緒にいるだけで・・・私には罪になるんです・・・」
「昨日の夜、正確には今日になるけど、こんなメールが来たんです」
首からぶらさげた僕の携帯を開く。
『守護霊5963号を霊法072条、人間との直接的接触禁止項目の違反とし刑を執行する』
『期日は2日後』
『尚、これ以上の深い接触が認められた場合、対象となる人間にも相応の措置を執る』
「あなたに、これ以上迷惑をかけたくない・・・」
「だから」
けーこの目から、涙が零れ落ちた。
「私を、捨ててください・・・」 116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:05:53.64 ID:7pPdgGnRO
うわああああああああ!!!!!!
保守 118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:11:47.39 ID:8s41lqTY0
言葉が出ない。
喉が渇いているのがわかる。
結局、僕はけーこと一緒にいることは叶わない運命だった。
時間がどれくらい経ったのかもわからない。
ただ、僕らの影は長く長く、伸びている。
さっきよりも、ずっと長く・・・。
「あなたの手で、私を捨ててほしいんです」
けーこが長い沈黙を破った。
「あなたが、死んだ私にたくさんの喜びをくれました」
「本当は私、携帯の中でずっと何年も過ごすつもりでいたんですよ?」
えへへ、と小さく笑う。 120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:17:56.76 ID:8s41lqTY0
「でも、あなたと出会えて・・・」
「あなたが私を孤独から救ってくれて・・・」
「本当は、最初あなたに声をかけたの、わざとなんです」
「どうしても、話しかけたくなっちゃって・・・」
「これじゃ、裁かれても仕方ないですよね」
「守護霊なのに・・・一緒にいたいと思ったんだから」
「それだけで、罪なんですよね・・・」
「・・・もう、いいから」 121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:19:28.42 ID:b9IW+AFi0
しえn。。。保守 124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:25:06.76 ID:8s41lqTY0
やっと声が出た。
その泣き笑いの表情を見るのが、耐えられない。
「え?」
「もう、何も言わなくていいから・・・」
「・・・はい」
「・・・逃げることは、出来ないの?」
「無理・・・でしょうね」
「私は、この携帯と一つだから・・・」
「この携帯に、連絡がくるから、絶対に無理だと思います・・・」
「でも!!やってみなきゃわかんないだろっ!!?」
自分でもこんな大きな声が出るなんて驚いた。
けーこは、あぁいつもの優しい笑顔だ。
僕が好きになった笑顔。 126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:29:36.85 ID:8s41lqTY0
「・・・さっき、言ったじゃないですか」
「これ以上、・・・迷惑かけれないって・・・」
迷惑だなんて、思ってないのに。
一緒にいたいと思ったのは、僕のほうなのに。
けーこの本当の正体を知っていて、自分の都合で嘘をついて。
なのに、罰を受けるのがけーこだなんて・・・。
あんまりじゃないか、あの世も。
「・・・僕には、出来ない」
「けーこを捨てるなんて・・・出来ない・・・」
やっと振り絞った言葉は、あまりにも弱弱しい言葉だ。
けーこが好きになった亮介は、あんなに男らしいのに。
「・・・ありがとう、ございます」
「それでも、ここでさよならです」
「携帯、持って行ってもいいですか・・・?」
僕は、静かに頷いた。
顔を上げた時、今にも消えそうな伸びた影は、
一つだけ・・・。 127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:32:57.56 ID:w4NJi390O
全俺が泣いた 128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:33:50.38 ID:8s41lqTY0
ふらつきながら、家路に着いた。
きっとこれは僕の犯した罪なんだ。
自分の汚い心で、けーこに触れようとして。
けーこを独り占めしたいと考えて。
亮介に会わせる顔が無い。
明日から、大学どうするかな・・・。
けーこが来てからずっとご無沙汰だったPCを立ち上げた。
久しぶりの掲示板に行っても、気が紛れない。
そう言えば、けーこが初めて喋ったのもこんな時だっけ。
僕が掲示板でふざけあってた時に突然声が聞こえたんだ。
ちょっと焦った声で。
亮介からのメールを教えたんだ。
守護霊だって言って。
大体、携帯の守護霊って何だよ。
何を守るんだよ。 129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:37:12.52 ID:wGVUrDRIO
これはすごくいいおはなし 130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:37:23.81 ID:8s41lqTY0
それで、目的を果たしたら天国に逝けるって。
僕が手伝うって言い出して。
結局、何もしてやれなかったなぁ・・・。
マナーモード解除したら、姿を現して。
全部、ここから始まったんだな・・・。
けーことの日々を思い返す。
たった数日。
それだけで、こんなに僕の中を占めている。
けーこと話している時堪えていた涙が溢れ出した。
止まらない。止まらない。
どうしてこんなに。
どこからこんなに。
涙が止まらない・・・。 132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:42:09.97 ID:7pPdgGnRO
うわああああああ…… 133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:43:42.16 ID:8s41lqTY0
画面が滲んで、掲示板が見えなくなった。
PCの電源を落とし、ベッドに横になる。
思い出が頭を巡る。
何もしてやれなかった自分の不甲斐無さが痛い。
『目的を果たせば、天国に逝ける』
「え?」
思わず声を出した。
でもこれって・・・。
頭を整理する。
一つ一つ、積み木を作り上げるように。
一つだけ、けーこを救う方法がある。
・・・僕とは、もちろん一緒にはいれないけれど・・・。 135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:47:22.76 ID:8s41lqTY0
同日、深夜―――
「いよいよ、明日か・・・」
『守護霊5963号を霊法072条、人間との直接的接触禁止項目の違反とし刑を執行する』
「きたきた」
『期日は明日』
「・・・続きはないみたい。よかった・・・」
「仕方ないよね、私が望んだことだから」
「幸せだったなぁ」
「幽霊に・・・なっ・・・てもっ、胸がっ・・・いっぱいに、なるんだなぁ・・・」
「・・・涙が・・・止まらないよ・・・」 140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 03:55:05.99 ID:8s41lqTY0
朝起きて、すぐに支度をし大学へと出た。
今日は1限からの授業だ。亮介も単位がやばいと言っていたから来てるはず。
まずは亮介を連れ去る。
「おっす、久しぶり。大丈夫か?」
「亮介、行くぞ」
「は?いや、俺これ単位マジでやば・・・」
「いいからっ!蛍さんに会いたくないのかよ!!」
「おま・・・何言ってんだよ・・・」
「いいから、ついてきてくれ」
僕の迫力に負けたのか、亮介は後についてきた。
よし、次はけーこを探さないと。 142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:04:46.07 ID:8s41lqTY0
亮介に連れられて、けーこの思い出の場所をまわった。
高校、中学、小学校、自宅、二人でよく遊んだ公園、亮介の自宅。
どこにもけーこはいない。
「なぁ、そろそろどういうことか教えろよ」
少しずつ日が傾き始めた時、亮介が聞いてきた。
僕は、亮介に事の顛末を話した。
正直言って、少しずつ焦りを感じていた。
絶対にどこかにけーこがいると信じていたから。
亮介は最初冗談半分で話を聞いていたが、だんだんと神妙な面持ちになった。
僕が、あまりにも蛍さんのことを知っているから。 143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:08:15.22 ID:3giXCBSwO
支援 145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:10:13.81 ID:8s41lqTY0
「・・・なぁ、それマジなのか?」
「信じてもらえないかもしれないけど、本当のことだ」
「マジかよ・・・。何で、俺に言わなかったんだよ?」
「最初は、本当に気付かなかった・・・」
「気付いて言わなかったのは、僕も蛍さんを好きになったから・・・」
「・・・ごめん」
「・・・なるほどな。なら納得したよ」
「え?」
「ここまで来てそれを認めないんなら、ぶっ飛ばすとこだ、グーで」
「でも、好きになったなら話はわかる」
「誰かを好きになるって自分の卑怯な所を本気で受け止めることだと俺は思うんだよ」
「俺も・・・そうだったからさ・・・」 148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:15:25.93 ID:8s41lqTY0
「亮介が・・・?」
「当たり前だろ。お前は俺を何だと思ってんだよ」
「ある意味、仙人かと・・・」
「よし、グーで殴ってやる、グーで」
ぷっと二人で吹き出した。
あぁ、僕が親友だと認めた男はこんな男だった。
僕の卑怯な所も受け止めてくれるのか。
ごめん、亮介。
ありがとう、亮介。
ひとしきり笑った後、亮介が言った。
「よし、だったらぜってー蛍見つけるぞ」
「んで、どっちがいいか選ばせる」
「まぁ、もう結果は見えてるけどな」 149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:19:55.27 ID:8s41lqTY0
「え?」
「いや、何でもない。それより、お前ん家ってこっから近かった?」
「まぁ、そこそこ」
「おし、走るぜ」
「はっ!?いや、家に行っても仕方ないだろ!」
「いいから、行くぞ」
亮介が走り出した。
僕は仕方ない、と後を追う。
もう日が落ちている。
時計に目をやると、19時半。
今日が終わるまで、後4時間半。 151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:23:51.32 ID:8s41lqTY0
本当に家まで全力疾走だった。
時間が無いから寄り道している暇はないのに。
「俺の知ってる蛍はさ」
息が整った亮介が話し出した。
「人のものを持っていなくなるほど器用じゃねぇよ」
「人のもの・・・あっ・・・」
僕の、携帯。
けーこ自身。
アパートの階段を昇り、僕の部屋の前に辿り着く。
僕と亮介はゆっくりとドアを開けた。 155 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:29:30.56 ID:8s41lqTY0
部屋は真っ暗だ。
第一、鍵は僕が持っている。
よく考えたら入れるはずが無い。
それでも、心臓の高鳴りが止まらない。
廊下を進み、リビングの電気を点ける。
「きゃっ!!」
ベッドに座った女の子。
驚き、眩しそうに手で顔を隠す。
顔なんか見えなくたって、わかる。
「けーこ・・・」 157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:34:55.82 ID:8s41lqTY0
全力で走ったからか、汗が流れるのを感じる。
時間が過ぎるのが、妙に遅く思えた。
「あ・・・ごめんなさい、携帯を返そうと思って・・・」
「蛍・・・だよな?」
「・・・え?」
亮介の問いにけーこが固まる。
「あ、けーこ、こいつはさ・・・」
「亮介君、だよね・・・?」
「え?」
けーこの反応に僕が固まってしまった。
全部、思い出したのか? 162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:42:42.70 ID:8s41lqTY0
「蛍・・・お前、覚えてんのか?」
「・・・けーこ?全部思い出したの?」
「・・・本当は、昨日の朝起きた時に全部思い出したんです」
「私が誰で・・・何をやって過ごしていたのか・・・」
「懐かしい街の匂いのせいかな?全部、思い出しちゃったんです・・・」
「でも、ごめんね?・・・会いには、行けなかった」
「・・・会うと、辛い思いをさせちゃうから・・・」
けーこがぽつりぽつりと話す。
僕の役目は終わった。
けーこが裁きを受ける前に、天国へと旅立たせる。
それがけーこを救う唯一の手段だった。
そのためには、二人を出会わせること。
自分の好きな人の幸せを願うのが、こんなに辛いとは思わなかった。
せめて、最後の時まで二人で過ごさせないと。
僕は二人に気付かれないように、そっと家を出た。 173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:52:59.87 ID:8s41lqTY0
少し歩いて住宅街を抜ける。
少しずつ街の明かりが遠ざかるかという場所に、僕のお気に入りの場所がある。
丘を登ったその上、小さなブランコとすべり台があるだけの公園。
小高いこの場所からは、街の明かりと星の光が両方楽しめる場所だ。
穴場だからか、誰もいない。
僕はブランコを一人で漕ぐ。
けーこの幸せを願って。
本気で好きだった。
こんなに誰かを好きだと感じたのは、多分初めて。
心に空いた穴がいつ塞がるかはわからないけど、
でも妙にすっきりした気持ちになれた。
「もう、一緒にいたいと願わないから」
「あっちでも、幸せで暮らしてね・・・」
END 174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:54:10.07 ID:kkFm4m78O
乙 175 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:55:48.66 ID:5aOHEo9oO
おつかれー 176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:56:13.61 ID:8s41lqTY0
うそです
「本当ですか?」
「え?」
丘の頂上に人影。
走ってここまで来たのかな。
少し息を切らして。
茶色のセミロング。
大きな黒い瞳。
首からさげた携帯電話。
優しい、笑顔。
「けーこ・・・?」
「本当に、一緒にいたいと願ってくれないんですか・・・?」 180 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:56:47.15 ID:0OsRiFq0O
…え? 184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:58:20.64 ID:kkFm4m78O
なん…だと? 185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 04:58:36.23 ID:C5bcobflO
なぜ嘘をついたwww 189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:03:58.95 ID:8s41lqTY0
なぜ嘘をついたのか・・・
解せぬ・・・
「亮介は、どうしたの・・・?」
「話してきました。辛いと・・・思ったけど・・・」
「・・・好きだったよって」
「そ・・・っか。よかったね、亮介もずっと好きだったんだから」
「・・・はい。でも、今は違うって言いました」
「・・・え?」
「他に好きな人が出来たから、ごめんねって・・・伝えてきました」 191 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:04:08.96 ID:5aOHEo9oO
続くのか 194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:06:07.24 ID:8s41lqTY0
「不器用で、少しめんどくさがりで・・・」
真っ直ぐ僕の目を見て離さない。
「でも、それ以上に優しくて」
肩で息をしながら。
「私を、その優しい目で見てくれた人・・・」
優しい目をしてるのは、けーこ、君だよ・・・。
「・・・あなたが、好きです」 196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:12:16.20 ID:ps5m72uxO
うわああああああああ 198 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:13:53.86 ID:8s41lqTY0
「そう、亮介君に伝えてきました・・・」
「僕も・・・けーこが好きだ」
「・・・離れたく、ないっ・・・!」
「ありがとう、ございます・・・」
「最期の一瞬を、一緒に居て下さい・・・」
「お願い、します・・・」
「・・・うん、わかった」 199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:18:40.30 ID:8s41lqTY0
すべり台の柱によりかかり、二人で寄り添った。
ふと感じた、決して温まらないけーこの、体温。
「捕われた鎖を断ち切る、っていうのは出来たんだよね?」
「多分ですけれど・・・。でも、もしかしたらダメかもしれません」
「え!?どうして・・・?」
「私が今、鎖に捕われてます・・・」
恥ずかしそうに顔を俯けるけーこ。
僕もだよ、なんて恥ずかしいことは言えなかった。
「何か・・・言ってくださいよ・・・」 203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:22:33.30 ID:8s41lqTY0
「ご、ごめん・・・。・・・亮介は何て?」
「・・・ありがとう、幸せになれって言ってました」
「昔からそうですけど・・・かっこつけすぎですよね?」
「いや、あいつは男の僕から見てもかっこいいよ」
「えぇ!?二人ってウホッな関係だったんですか!!?」
「何でだよ!!つかウホッとかどこで知った!!!?」
二人して笑う。
最期の瞬間を拒むように。
今が永遠に続くように。 205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:25:47.69 ID:LtryzH28O
し…保守 209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:27:35.41 ID:8s41lqTY0
でも、刻一刻と近づいていたその時は、ついにきた。
「・・・そろそろ、みたいです・・・」
また優しい顔してけーこが笑う。
別れ際で、涙は見せない。
言いたいことがあふれるけど、言葉にならない。
「・・・どうして、ここがわかったの?」
やっと言ったのはこんな言葉だった。
少しずつ薄れていくけーこの体。
「私は、守護霊ですから」
その笑顔も薄れていく。 211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:30:34.56 ID:8s41lqTY0
「携帯はけーこが持ってたじゃないか」
「最初に言いましたよ?」
クスッと可笑しそうに。
「私があなたを選んだって」
「私はあなたの守護霊ですよ」
もう、けーこの向こう側の景色が見えるくらい薄れている。
「あなたを選んだ、私でよかった・・・」
「ありがとう、ございました」 212 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:34:13.82 ID:JbkzbrW9O
追いついただと…しえ…えっと…保守 213 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:36:36.38 ID:8s41lqTY0
涙は流さない。絶対に。
必死に歯を食いしばり、堪える。
でも、そのせいで言葉が出ない。
伝えたいことは山ほどあるんだ。
ありがとう、ごめん、好きだ、さようなら・・・。
けーこのありがとうの言葉と同時に、けーこが消えそうになる。
僕は食いしばる歯の力を弱め、大きく口を開けた。
「またねっ!!!!!!!!!」 216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:39:17.37 ID:8s41lqTY0
最期に笑った気がした。
僕は大きく手を振る。
またねって、遠くのけーこに見えるように大きく。
僕の携帯が地面に落ちた。
最近変えたばっかりの新機種。
一件のメールを受信している。
『またね』
うん、必ずまたどこかで。 217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:42:35.74 ID:8s41lqTY0
終わりです
たくさんのしえ・・・じゃない保守ありがとうございました
これからSSスレを見つけたらこの流れ使おうと思います
最後に、ここで終わらせるつもりだったけどどうしても書きたい話ができました
イメージ崩すかもしれないので、眠たい人は寝てください 218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:42:55.62 ID:Y/QvZE+bO
やべぇ展開予想出来たのに鳥肌 220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:45:30.61 ID:JbkzbrW9O
これほど甘く切ないラブストーリーを書ける人が
こんなところにくすぶってるとは…そこらの小説よりおれは好きです 221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:45:58.73 ID:meKxQ6E8O
3年も思い続けてた亮介が不憫で仕方ない 222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:47:05.71 ID:oicSML78O
亮介は俺の嫁 223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:47:39.63 ID:8s41lqTY0
―――――
『天国逝きおめでとう、守護霊5963号』
『しかし、君は同時に霊法に触れる罪も犯した』
『君をこのまま天国逝きにするわけにはいかない』
『しかし、配属からたった数日で目的達成した君の力も考慮しよう』
『君に与えられる刑罰は・・・』
――――― 224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:50:12.73 ID:2hChuLiIO
wktk 226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:52:23.02 ID:8s41lqTY0
けーこがいなくなり3ヶ月。
僕は今までと変わらない生活を続けている。
亮介は少しずつ吹っ切れたらしく、彼女ほしいと息巻いている。
僕は、まだもう少しだけけーこを思って生きようと思う。
「このままじゃいけないんだけどな・・・」
ネットで掲示板を見ながら呟く。
今日も掲示板は賑わっている。
いつもと何も変わらない風景だ。
けーこがいても、いなくても。
世の中は変わらず回り続けるんだな、と少し切なくなった。 228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:57:03.49 ID:2hChuLiIO
これは… 229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 05:58:53.22 ID:8s41lqTY0
携帯が震える。相変わらずのマナーモード設定。
『マナーモード解除してください!!』
この、アドレスのないメール。
3ヶ月ぶりに見る、空白のアドレス。
期待と驚きで震えた指でマナーモードを解除する。
「ふうっ!お久しぶりです」 230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:03:14.99 ID:2hChuLiIO
俺の嫁ktkr 231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:03:26.23 ID:8s41lqTY0
優しい笑顔。
何一つ変わらない姿。
いや、髪が少し短くなった・・・?
「けーこ・・・?どうして!?」
「霊法に触れた罰で来ちゃいました」
えへへ、と笑う。少し幼い笑顔。
「霊法って・・・、天国に逝ったはずじゃ・・・」
「逝く予定だったんですけど、法に触れた者はダメだって・・・」
「それで天国逝きと刑罰が相殺して、またやり直しです」
「また守護霊として、一から」
ドジっちゃった、とでも言うように笑うけーこ。
その笑顔は、嬉しそうだ。 236 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:07:11.44 ID:8s41lqTY0
「じゃあ、また目的達成しなきゃいけないってこと?」
「はい。それに今度は時間がかかりそうなんですよね」
「どんなのか教えてくれる?」
「えへへ・・・。それはですね――――――――」
恥ずかしそうに笑うけーこ。
あの時から、何一つ変わっていない。
また、これからは一緒だ。
「また、僕のところに来てよかったの?」
「言ったはずですよ?」
またねって約束、守ってくれたんだね。
「私が、あなたを選んだって」
SEE YOU!!! 242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:11:35.04 ID:8s41lqTY0
これにて終わりです!!
感想・批判どんと来いwwwwww俺はもう寝ないwwwwwww
ここまで支援いや保守してくれたみんな本当にありがとうございます
こんなにも猛者がたくさんいるなんて思わなかったww
最後にSEE YOUってことでもしかしたらまだこの話は続きがあるかもです
その時はまたお付き合いください
本当にありがとう!!! 243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:11:58.63 ID:DebCgQSoO
先生!お疲れ様でした! 246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:13:12.36 ID:CWGvkc8JO
よかった!乙! 249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:13:43.83 ID:LQ8rncjv0
松本人志結婚したってよ 253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 06:16:58.19 ID:r3w3po5WO
久々に良スレ見たわ。乙 287 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 16:13:50.06 ID:JYZF1ybOO
>>1
乙
続編期待age 294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/19(火) 18:00:44.00 ID:SuAbu94C0
続編期待!!!
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2009/05/19 :
2chスレ :
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